ながおかドキドキ通信
小説「光る砂漠」−夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
三條結核病院小児病棟看護婦詰所
涙をこらえながら小児病棟の朝の検診の様子を台帳に記入するゆき。頭の中には3年前、見附中学3年22Hのホームルームの光景が浮かんで来ていた。
見附中学3年22Hホームルーム
もうすぐ卒業を控え将来の進路を語り合うホームルーム。
学級主任の渡辺先生「皆はもうすぐ卒業を控えていますね。これからこのクラスの皆が将来どういう方向に進みたいか夢を話し合いたいと思います。夢ですので今、自分がこうしたいとか、ああなりたいと思うことを話し合ってその夢を実現するためにはどうしたらいいのか話し合ってください。それでは一番元気のいい松本君から発表してもらいましょうかね」。
ハンサムでいかにもスポーツマンタイプの松本正。「オレ野球が好きらっけ、長岡の中越高校に進学して野球部に入って甲子園を目指したいです」と自分の夢を語った。セーラー服姿のゆき。松本を好いているのでそれを聞いていたゆきは顔を赤らめながら下をうつむく。
「松本君はいつも野球のことばっかりだね。甲子園に出場するにはどうしても高校へ進学しねえばなんなえですね。そうすると高校へ進学するにはどうしんばねえですかねえ松本君・・・。高校へ進学するには今、一番大事なのは受験勉強を一生懸命することですね」と渡辺先生は諭すように話した。「そういわれればそうですね。先生、高校へ入学する簡単な方法てねえがですか」と松本はクラスの笑いをとりたくて茶化すように渡辺先生に聞いた。「そんげな簡単な方法があれば先生が教えてもらいたいくれえですて」という渡辺先生。そんな二人のやりとりを聞いていたクラス中に笑い声があふれる。ゆきも笑い顔を見せていたが何故か顔の中には暗さが漂っていた。【続く】