ながおかドキドキ通信

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    小説「光る砂漠」−夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
 宰の病室 
 廊下から車椅子で急いで病室に飛び込む宰。ベットの脇までたどりつくと体全体で喜びを表す。「やった。やったぞ!」両手に握りこぶしを作りながらうれしさを表し、顔は次第にう;し涙でクシャクシャになってくる宰だった。病室には宰の登校の知らせを聞いた入院仲間が病室を訪れ喜びをわかちあっている。そこにゆきが花束を持って訪れる。「吉住先生から聞いたわよ。よかったわね宰君。これは私からのおめでとうのプレゼントですよ」といってゆきは、宰に花束を渡す。「ゆきさんて宰君のこととなると何だか特別らみたい。ゆきさんて宰君のことが好きんがあ」と幼児のよしこは二人の関係を不思議そうにそういった。「よしこちゃんそんげなことねえだろ。ゆきさんはよしこちゃんにだって優しいだろがね」という宰。「だけど私と宰君では何だか優しさが違ごうみてらわ・・・。でもゆきさんは綺麗で姉ちゃんみていだし宰君は兄ちゃんのようらっけゆきさんが宰君に優しくしてもいいがあ」とよしこは屈託なく話した。「よしこちゃんてようく人をみているがあね。私、ちよっと恥ずかしくなったわ」とゆき。「ああ、ゆきさんの顔が赤くなった」とよしこは楽しそうにはしゃいだ。
 宰の病室を訪れていた皆がゆきの顔を見るのでゆきは恥ずかしさのあまり急いで病室を出て行った。ゆきが去った後の宰の病室には楽しい笑い声がいつまでも続いていた。
(続く)
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