ながおかドキドキ通信


   小説「光る砂漠」夭折の詩人矢澤宰の生涯ー2

  卒業式 
 1958年(昭33)。矢澤宰は13歳。7歳の時に腎臓結核を発症。5年生の時、64日間を病気のため欠席したので6年生に進級できず1年遅れで見附市立上北谷小学校の6年生となっていた。きょうはその上北谷小の卒業式。校長が卒業生1人づつに卒業証書を手渡している。約1時間の式も最後の場面。宰は卒業生を代表して答辞を読み上げる役になっていた。
 式の司会進行役を務める先生が「それでは卒業生を代表して答辞を読んでもらいます。卒業生代表、矢澤宰君」とコールする。
 3月だというのにさっきからなぜか汗がにじみ出て全身にダルさを感じていた。それでも名誉ある答辞を読み上げる役を務めなければならない宰は必死の形相でステージに上がり答辞を読み上げる。顔面は蒼白となりながらもなんとか最後まで答辞を読み上げた宰だった。
 ステージからの階段を下りている瞬間、バタンと床に倒れこんだ。会場はどよめき司会進行役の先生が慌てて宰を抱きかかえてとりあえず席に座らせた。
                             【続く】