ながおかドキドキ通信


    小説「光る砂漠」ー夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
      上北谷小の保健室 
 保健室のベットに横たわっている宰。母、麗と校長、それに担任の青木先生が心配そうに宰を見ている。
 校長が宰の顔を見ながら「宰、大丈夫か」と聞く。宰は苦しくて話すこともできずただ「・・・」と唸ることが精一杯だった。それでも校長は宰を元気づけようと「宰、今日の答辞はよう頑張ったろ」といたわりの言葉をかけた。その時も宰は校長の言葉に応えられず「・・・」とうなずくだけだった。麗は「よっぽど疲れたんだろうのう」と宰をいたわった。校長は「はよ家に帰って寝かしたほうがいいじゃねえろかのう」と母、麗を促した。麗は「そうらのうはよ家に帰って寝かせたほういがいいろかのう」と宰の上半身を抱きかかえてベットから降ろした。
 上北谷小は見附でも栃尾に近い山あいの田園地帯。3月だが田んぼにはまだあたり一面、残雪残っていて歩いて学校から数分の宰の家の前の田んぼにもそうした光景が見えた。
 中学進学のため詰襟の学生服を着た宰をいたわるようにその後ろを歩いていた麗だった。歩きながら麗は「宰、なんぎいんだろう。家に帰ったらはよ寝んばだめらこてや」と宰に語りかけた。それでも宰は卒業式での自分のふがいなさが気になったのか「ちっとばか疲れただけらけ」と強よがってみせた。突然、麗は歩いている宰の前に出てを宰を呼び止めひたいに手をやり熱を測ってみた。「宰、オメエ熱があるみていらろ。はよ家に帰って寝んばねえなあ」と宰の体調に気をもんでいた。
                                                                                     【続く】