ながおかドキドキ通信


 小説「光る砂漠」ー夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
   三條結核病院の小児科診察室
 宰の体に聴診器を当てては外し、時には問診を行う吉住医師。傍らには麗が心配そうに立っている。吉住医師が「た腎臓が結核にやられていますね。入院してしばらくは安静にして様子を診ましょう」。麗が「先生、入院はどれくらいになるのですか」と聞く。吉住医師は「何とも厄介な病気なので何時頃まで治るとはハッキリと申し上げられません・・・」とすまなそうな表情で麗に返答する吉住医師だった。長期入院を覚悟しなければならない宰親子。吉住医師は続けて「この病院には学校が併設してありますから入院しながら学校へ行かれますから勉強のことは心配しなくていいいですよ」と宰親子を安心させようと話した。麗はただうなずくしかなかった。
 小児病棟の病室
 宰はベットに寝ている。知らせを聞いて駆けつけた元彦。これからの入院生活に備えるためベットの周りを片付ける麗だった。「とうちゃん、かあちんオレ何時、病気が治るがあろか」という宰。元彦「何時になるか分からんかも知んねろも、心配しんな」という元彦。麗が「ほんま治るすけ心配すんな。ここには学校もあるすけ勉強もできるからさ・・・」と宰に語りかける。「学校もあるが」と不思議そうな表情の宰だった。「そうらてっさ。だっけ心配しねえでいいがあよ」という麗。病気のせいで土色の顔色の宰。それでも入院しながら勉強できることでかすかな希望を見出した宰だった。

 小児病棟の休憩室
 元彦と麗がテーブルをはさんでガックリとした表情で向かい合っている。麗の体が小刻みに震えている。泣きながら「なんで私らの子どもがこんげな目に遭わんばねえんだろか・・・。宰が何か悪りいことでもしたがあろか」という麗。元彦はそんな麗を憐れんで「これも宰の運命らかも知んねえ・・・」という。やりきれなくなり立ち上がって窓の外に目をやると春の雨が激しくポプラの木をぬらしていた。                                                      【続く】