ながおかドキドキ通信


   小説「光る砂漠」−夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
             三條養護学校の教室  
 英語の授業が終わり放課後となる。遠間先生が教室を出で行こうとする宰を呼び止める。「矢澤ちょっと話があるから残っていてくれ」と遠間先生は宰にそういって教務室に急いだ。宰は所在なさそうに自分の席で待っている。再び教室に入ってきた遠間先生。
 「これは県立高校に出す受験の願書だが、矢澤は高校を受験する気はあるのかね」と遠間先生。「この間、家へ外泊しに帰った時、両親とも話したんですけど両親も進学していいといってくれたのでそのことで吉住先生や遠間先生に相談しようと思っていたところなんです」と宰。「今までは正規の中学校の課程を終えた生徒か養護学校の生徒でも願書を出す時点で退院していなければ受験はむつかしかったが吉住先生と相談した結果、退院見込みという形で願書を受け付けてもらおうと思ってね」と遠間先生。「高校へは受験したいです。けれども病院から養護学校へ通っている身で退院もしてないのでどうやったら願書がだせるかと考えていたとこなんです」と宰。「まだはっきりと決まった訳ではないが病院と養護学校ではこれから君が受験しようとしている高校にかけあって正式に退院見込みという形で受験させてもらおうと考えているんだよ」と遠間先生は宰を諭すように話した。「先生、そんげに気にしてもろうてすいません」と宰。「そんなことはいいんだ。君も含めて養護学校で過ごした体の具合の良くない生徒でも高校へ進学したいという希望があればどんな形であれ受験させてもらえるようにするのはこれからの養護学校にとっても大事なことだからね」と遠間先生は真剣な表情で宰に話した。「ところで矢澤、受験したい高校はどこなんだ」と遠間先生。「オレ、栃尾高校を受験しようと思ってます」と宰。「栃尾高校、新設の見附高校じゃないのか・・・」一瞬、驚いた表情の遠間先生。「見附高校は出来たばっかりで簡単に入学しやすいだろうけどオレ、やっぱりちいっとばか面倒でも今の段階で栃尾高校の方が程度が高いと思うので養護学校の生徒でも頑張れば高校へ進学できる学力があるということを証明してみたいんです」と宰。「そうか。わかった矢澤がそこまで覚悟を決めているんだば先生も頑張って願書を受け付けてくれるよう本気でやってみよう」と遠間先生も熱き思いを宰に話した。「先生、よろしくお願いします」と宰。高校進学を巡って宰と遠間先生は病気と高校受験という高いハードルにこれから挑戦しようとする意思を強くするのだった。

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