ながおかドキドキ通信


  小説「光る砂漠」−夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
       三條養護学校の授業風景
 以前にもまして真剣に授業を受ける宰。教室内には先生と生徒の笑い声が絶えない。英語の授業も終えて下校時間。黒板の字を消す遠間先生。
 「先生、オレちよっと話があるんですげど」と宰。「何だね。そんな真剣な顔をして」と答える遠間先生。「オレ前から考えていたことらろも来年、高校を受験しょうと思うてがあです」と宰。「うぅん。このまま病気か良くなって今年の暮れあたりに退院の見込みがあればそれも可能だが・・・。まあ吉住先生が何といわれるかだな」と遠間先生。「先生、オレ今まで病気のせいで人から与えられた生き方ばっかしだった。今度は自分の力で自分の行く道を決めたいんです」と宰はいつになく真剣に話した。「わかった。少し時間をくれ」と遠間先生。
 教室を出てゆく宰を見送りながら椅子に腰をおろし考え込む遠間先生。教室の窓の外目をやると初夏の夕暮れが迫っていた。授業を終えた宰が涼風が心地いい信濃川の土手を病室の幼い子どもらと気持ち良さそうに散歩している。途中、土手の草むらの中に寝そべる宰。その顔に真っ赤な夕日が注ぐ。
 「おれの海。暗いまぶたの中で どう どう と 波うつ海が呼ぶ 青黒い力 渦巻く夢 情熱 うねり うねる悩み ひきずりこむように 海が浮かぶ」(宰の詩集から)。

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