ながおかドキドキ通信


     小説「光る砂漠」ー夭折の詩人矢澤宰の生涯ー
       矢澤家の茶の間
 茶の間の円卓に用意された夕食。ご馳走は稲荷寿司、ウルメ、枝豆、卵焼き、野菜のてんぷら。宰には飲み物としてサイダーが用意されている。元の席の前には鮭の粕漬けの焼き魚と銚子2本が置かれている。
 「とうちゃん夕飯ができたよ。そろそろ食べようねっか」とレウ。庭の植木に水をやっている元。「おう、そうするか。宰、宰、夕飯らいや」(庭から二階の宰の部屋に向かって宰を呼ぶ)。「はあい」と階段から降りてくる宰。席に着く元、レウ、祖母。「ほうお、今日はごっつおだな」と元。「たいしたもんじゃないけどそいでも宰が病院から帰ってきたからのう」とレウ。祖母は「宰、いっぺいこと食え。本気にこうして家に帰ってこられるようになってオラもうれしいれや」と稲荷寿司をほうばる。「うん・・・」そういって宰も稲荷寿司を美味しそうに食べる。元は「これだけ元気なら来年の春には何とか退院できそうらねっか」と杯を口に運びながらつぶやく。「とうちゃんオレちっとばか皆に頼みがあるがあろも」と宰。「何だまた」と元。「オレ前から考えていたんだろも養護学校で中学を卒業したら高校へ行きてんだ」と宰。元は驚いて「病院も退院できるかどうかわからんのにそんげなことできるがあかや」と宰に尋ねる。「卒業しねば高校へ行けねえろも、そのことは病院に帰ったら吉住先生と遠間先生に相談してみようと思ってるが」と宰。「高校へ進学するのはいいろも病気のことが心配らて・・・。病院に戻ったらよう先生に相談してな」とレウ。「うん、そんだば病院へ戻ったら先生に相談してから決めるすけいいの」と宰。「いいんじゃねぇかや」と元。宰の進学のことを話題にしながら久しぶりの一家団欒の楽し夕食の矢澤家族だった。

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